SGLT2阻害薬は、食事で摂取した糖の吸収を抑えるダイエット薬です。
余分な糖を体外へ排出することで、カロリーカットや血糖値安定化などの効果を期待でき、服用を継続すると体重の減少も見込めます。

しかし、SGLT2阻害薬を用いたダイエットはすべての人に向いているわけではなく、もともとの生活習慣や体質によっては別のダイエット薬のほうが適している人もいます。

SGLT2阻害薬に期待できるダイエット効果、副作用のリスク、他のダイエット薬との違いを解説します。
服用を始める前に、自分に本当にあったダイエット方法かどうかチェックしましょう。

SGLT2阻害薬で本当に痩せる?薬の仕組みとダイエット効果を解説

SGLT2阻害薬は糖尿病治療を目的に開発された薬ですが、糖尿病患者が服用した臨床試験の結果、体重減少効果が確認されたことでダイエット目的でも利用されるようになりました。

SGLT2阻害薬で痩せる仕組みをまずは知り、自分の体質に最適な薬かどうかを確認しましょう。

SGLT2阻害薬はどんな薬?作用機序と痩せる仕組みを解説

SGLT2阻害薬による減量の仕組み

SGLT2阻害薬は、糖の再吸収をブロックして、余分な糖分を尿として体外に排出する働きがあります。

本来、腎臓で回収された糖は再び血液中に戻され、エネルギーや脂肪として使われますが、SGLT2阻害薬は糖が再吸収される前にそのまま体外へ排出します。

結果として、1日あたり200~300kcal分の糖が尿と一緒に排出されるため、摂取カロリーを抑えるダイエット効果が期待できます。

食事制限をしなくても糖質をコントロールできる点が、SGLT2阻害薬の大きな特長です。

脂肪燃焼やインスリン抑制による体質改善効果も期待できる

カロリーを減らすだけでなく、SGLT2阻害薬は体質そのものを痩せやすい状態に導く作用もあります。

糖の排出によって体内のエネルギーが一時的に不足すると、代わりに脂肪を燃焼するようになり、内臓脂肪の消費が促されて減量効果をさらに期待できます。

また、SGLT2阻害薬には血糖の急上昇を抑える働きがあるため、脂肪をため込みやすくするホルモンであるインスリンの分泌も自然と抑えられます。

脂肪がつきにくく、落としやすい体質に改善していけることも、SGLT2阻害薬が注目されている理由のひとつです。

SGLT2阻害薬で何キロ痩せる?臨床的な減量目安

SGLT2阻害薬による体重減少の目安は、臨床試験で平均2~3kg程度とされています。

糖尿病患者を対象としたSGLT2阻害薬の代表的な臨床試験では、フォシーガ・カナグル・ジャディアンスの3つの薬剤に関し、12~24週間の服用で有意な体重減少が確認されています。

SGLT2阻害薬の減量効果に関する臨床試験結果
薬剤名 対象者 服用期間 平均体重減少
フォシーガ 2型糖尿病患者 24週間 -2.5kg
カナグル 2型糖尿病患者 26週間 -3.3kg
ジャディアンス 非糖尿病の肥満者 12週間 -2.0kg

ただし、体重減少の幅には個人差があり、食事内容・運動習慣・服用しているSGLT2阻害薬の種類によって効果は異なります。

糖質の摂取量が多い人や、BMIが高めの人ほど効果が出やすい一方で、SGLT2阻害薬は短期間で急激に痩せる薬ではなく、緩やかな体重コントロールを目指す薬として活用するのが現実的です。

3ヶ月~半年ほどを目安に、食事や生活習慣の見直しとあわせて継続することが効果を引き出すポイントです。

SGLT2阻害薬を利用したダイエットが向いている人と向いていない人

SGLT2阻害薬を利用したダイエットが向いている人と向いていない人
向いている人
  • 糖質をよく摂る人:炭水化物や甘いものが多い食事に効果を発揮
  • 無理な食事制限を避けたい人:食欲を抑えずにカロリーカットが可能
  • 軽い運動習慣がある人:脂肪燃焼効果をさらに高められる
向いていない人・できない人
  • 糖質をほとんど摂らない人:排出できる糖が少なく効果が出にくい
  • 短期間で大幅に痩せたい人:緩やかな減量を前提とした薬
  • 腎機能に問題がある人:腎臓を通じて作用するため服用は不可

炭水化物をよく摂る人や、自然な形で体重を落としたい人にはSGLT2阻害薬が適しています。
一方で、腎臓に不安がある人や、即効性を求める人には向かないケースもあります。

SGLT2阻害薬の他、ダイエット目的で処方される薬は種類がいくつかあります。目標体重や体質によっておすすめのダイエット薬は変わるので、まずは自分に合ったダイエット薬はどれなのかこちらの記事で診断してみてください。

ダイエット目的に使われるSGLT2阻害薬を効果で比較

SGLT2阻害薬は、いずれも糖を尿として排出する作用を持っていますが、作用の強さや副作用、安全性は薬によって異なります
ダイエットを目的に使う場合は、自分の体質や目的に合った薬を選ぶことが重要です。

SGLT2阻害薬は主に6種類!特徴を比較

日本で承認されているSGLT2阻害薬6種類は、それぞれ作用の特性や副作用の傾向に違いがあります。
ダイエット目的での使用において比較されることが多い、有効成分と特徴を一覧で整理しました。

SGLT2阻害薬6種類の比較
薬剤名 有効成分 特徴
フォシーガ ダパグリフロジン 体重減少やむくみ改善に強みがあり、実績も豊富
カナグル カナグリフロジン 排出できる糖の量が多く、減量効果が高めとされる
ジャディアンス エンパグリフロジン 作用時間が長く、安定した効果が得られやすい
スーグラ イプラグリフロジン 日本人向けに開発された種類で、副作用が少ない
ルセフィ ルセオグリフロジン 作用がマイルドで安全性を重視したい人に適している
デベルザ トホグリフロジン 副作用が少なく、はじめての人にも使いやすい

ダイエットに向いているSGLT2阻害薬はどれ?

SGLT2阻害薬の6種類

ダイエット目的でSGLT2阻害薬を選ぶ際は、自分の体質や目標に合わせて薬を選ぶことが重要です。

ダイエットの目的別おすすめのSGLT2阻害薬
目的・タイプ おすすめの薬剤
しっかり体重を落としたい フォシーガ / カナグル
強い作用が不安・安全性を重視したい ジャディアンス / デベルザ
日本人に合った薬を選びたい スーグラ / ルセフィ
短期間で変化を感じたい カナグル(糖の排出量が多い)
副作用が少ない薬がよい ルセフィ / デベルザ

すべてのSGLT2阻害薬に共通するのは糖の排出によるカロリー減少という基本作用です。
ただし、効果の出やすさや副作用リスクには個人差があるため、医師と相談しながら自分に合った薬を選びましょう。

SGLT2阻害薬に副作用はある?低血糖などのリスクと注意点

SGLT2阻害薬の副作用とダイエット目的で使用する際のリスク

SGLT2阻害薬は糖尿病治療薬として広く使用されており、ダイエット目的での服用でも一定の安全性が確認されています。ただし、糖の排出によるカロリー減少には副作用のリスクも伴うため、正しい知識が必要です。

SGLT2阻害薬は低血糖になりにくいダイエット薬

SGLT2阻害薬は、血糖を尿と一緒に外へ出すことで体に働く薬です。
インスリンのように血糖値を急激に下げる薬ではないため、単体で使うときは低血糖になりにくいといわれています。

ただし、インスリンなど他の糖尿病の薬と一緒に使うと、低血糖になることがあるため注意が必要です。また、食事を抜いたり、糖質を極端に減らしすぎた場合も、ふらつきやだるさを感じることがあります。

SGLT2阻害薬の服用を安全に継続するためにも、しっかり食べて、栄養バランスを整えることが安全に続けるポイントです。

脱水・感染症・筋肉減少などSGLT2阻害薬で起こりやすい副作用

SGLT2阻害薬は比較的安全性が高い一方で、使用中に起こりやすい軽微な副作用も報告されています。

SGLT2阻害薬で起こりやすい副作用と対策
副作用 主な症状 対策
脱水 だるさ、めまい、ふらつき こまめな水分補給、暑い日の運動を控える
尿路感染症 排尿時の痛み、膀胱炎、膣カンジダなど 排尿を我慢しない、清潔なトイレ習慣を心がける
筋肉減少(サルコペニア) 筋力の低下、疲れやすさ たんぱく質を意識した食事、軽い筋トレを習慣化

SGLT2阻害薬の副作用は、水分補給をこまめに行う、排尿を我慢しない、軽い運動を継続することで予防できます。体調に違和感がある場合は、医師に早めに相談しましょう。

稀に糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)のリスクあり

ごくまれに、SGLT2阻害薬の使用で糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を発症するケースが報告されています。DKAは、血糖値がそれほど高くなくても起こる可能性があるため注意が必要です。

水分不足、過度な糖質制限、過度な絶食がきっかけとなることが多く、DKAが疑われる症状がある場合はすぐに受診が必要です。

DKAの主な症状

吐き気、強い疲労感、息苦しさ、口の渇き、意識のぼんやり

糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)とは?

脂肪の分解によって生成されるケトン体が過剰となり、血液が酸性に傾く危険な状態。治療が遅れると意識障害や昏睡を引き起こすことも。

SGLT2阻害薬を用いたダイエット期間中にDKAを予防のためには、水分をしっかりとり、糖質制限も極端に行わないことが大切です。

ダイエット効果を引き出すSGLT2阻害薬の服用方法と継続方法

SGLT2阻害薬は飲み方を守るだけでなく、生活習慣とあわせて取り組むことで効果をより高めることができます。
SGLT2阻害薬で効率よく痩せるために、ダイエット目的で服用する際の基本的なルールと、成果を引き出すためのコツをチェックしておきましょう。

SGLT2阻害薬をダイエット目的で服用するときの正しい飲み方

SGLT2阻害薬の正しい服用方法
服用量 1日1錠
服用のタイミング ・毎日決まった時間に服用する
・朝食前または朝食後の服用が一般的(薬により異なる)
1日1回決まった時間に飲む

SGLT2阻害薬は、基本的に1日1回の服用で効果を発揮します。朝に服用することが多く、食前・食後のどちらでも使えますが、毎日同じ時間に飲むことが大切です。

水分をしっかり摂る

糖と一緒に水分も排出されるため、1日1.5〜2Lを目安にこまめな水分補給を行いましょう。脱水を防ぐだけでなく、代謝の維持にもつながります。

アルコール・糖質の摂りすぎに注意

アルコールは脱水の原因に、糖質の摂りすぎは尿中の糖が増えて膀胱炎のリスクになります。
バランスの良い食事を意識し、飲酒は控えめにすることが推奨されます。

SGLT2阻害薬のダイエット効果を最大限に高めるポイント

SGLT2阻害薬のダイエット効果を引き出すポイント
糖質の多い食事を適度に調整する

SGLT2阻害薬は糖を排出する薬なので、糖質をまったく摂らないと効果が出にくいことがあります。
極端な制限ではなく、適度に糖質を取り入れて、食事全体のカロリーを調整しましょう。

運動を取り入れるとさらに効果的

SGLT2阻害薬は摂取カロリーを減らす作用がありますが、消費カロリーを増やす運動を組み合わせるとより効果的です。
ウォーキングや軽めの筋トレでも脂肪燃焼を促進できます。

長期的に継続する意識を持つ

この薬は即効性があるものではなく、数ヶ月かけて少しずつ体重を落とすタイプです。
焦らず、3ヶ月〜6ヶ月ほどを目安に、無理のないペースで継続することが重要です。

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の違いを徹底比較

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の違い

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は、いずれも糖尿病治療薬として使われてきた薬ですが、体重減少効果があることからどちらもダイエット目的での使用にも注目されています。

血糖値を下げるという共通点はあるものの、作用の仕組み・痩せ方・副作用・費用など、大きな違いがあります。
SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の特徴を、効果・副作用、費用、おすすめの使い方に分けてわかりやすく比較します。

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬はどちらが痩せる?効果と副作用で比較

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬のそれぞれが向いている人

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬はどちらもダイエット効果を期待できますが、痩せる仕組みと副作用の出方が大きく異なります。

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の比較表
SGLT2阻害薬 GLP-1受容体作動薬
痩せる仕組み 尿から糖を排出し、1日200〜300kcalのカロリーをカット 食欲を抑えるホルモン様作用で自然に食事量が減る
効果の出方 ゆるやかに体重が落ちていく 比較的早く効果を感じやすい
主な副作用 脱水、尿路感染症、筋肉減少など 吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状
服用方法 内服タイプ 内服タイプ(リベルサス)
注射タイプ(マンジャロ、オゼンピック)
※注射薬の投与頻度は種類により異なる

食事量はそのままで無理なく痩せたい方にはSGLT2阻害薬、 短期間でしっかり体重を落としたい方にはGLP-1受容体作動薬が向いています。

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の費用相場を比較

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の費用差

薬を用いたダイエットを継続するうえで、1ヶ月あたりの費用感も大切な判断材料になります。

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の費用比較
SGLT2阻害薬 GLP-1受容体作動薬
費用相場 約8,000〜15,000円 約20,000〜30,000円以上
保険適用 なし(ダイエット目的では自由診療) なし(ダイエット目的では自由診療)
薬の形式 飲み薬 注射(週1回タイプが主流)
継続のしやすさ コスト・手軽さの面で始めやすい 効果は高いが費用と注射がハードルになりやすい

コスト面で手軽に始めたいならSGLT2、費用より効果重視ならGLP-1が向いています。

SGLT2阻害薬はダイエットにおすすめ?結論はGLP-1が最適

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬はどちらも体重減少効果がありますが、より高い減量効果や即効性を重視するならGLP-1のほうが最適といえます。

GLP-1受容体作動薬が優れている理由
  • 体重減少効果が高く、SGLT2よりも早く結果が出やすい
  • 食欲が抑えられるため、無理なく摂取カロリーを減らせる
  • 運動をしなくても体重が落ちやすい
どちらを選ぶべき?
  • しっかり痩せたい → GLP-1受容体作動薬
  • 食事の量は変えたくない → SGLT2阻害薬
  • より効率的に痩せたい → GLP-1とSGLT2の併用が最適

GLP-1受容体作動薬はダイエット効果の高さが魅力ですが、価格や副作用の面も考慮が必要です。
SGLT2阻害薬も「ゆるやかに痩せたい人」「食事を楽しみながら痩せたい人」に適しており、目的に応じた選択が大切です。

3ヶ月~半年を目安に体重を大きく減らしたい方はSGLT2阻害薬よりもGLP-1ダイエットが向いているケースが多いです。
GLP-1の内服タイプ(リベルサス)と注射タイプ(マンジャロ・オゼンピック)の費用相場やオンラインでの購入方法についてはこちらの記事でまとめているので、ダイエット効果重視の方はあわせてチェックしてみてください。

SGLT2阻害薬はGLP-1との併用がおすすめ!相乗効果で効率よくダイエット

SGLT2阻害薬はGLP-1との併用がおすすめ

SGLT2阻害薬は、尿中に糖を排出することで血糖値を下げ、カロリーカット・脂肪燃焼の促進によってダイエットをサポートしてくれる薬です。
ゆるやかな体重減少を期待できますが、単独での減量効果には限界があり、食事管理や運動と併用することが重要です。

より確実に体重を落としたい場合には、GLP-1受容体作動薬の併用が有効です。
GLP-1受容体作動薬は食欲を抑える作用があり、SGLT2阻害薬と併用するとカロリーの吸収を抑えつつ、食事量もコントロールできるため、より高いダイエット効果が期待できます。

ダイエット効果を最大化するには、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の併用がベスト! それぞれの強みを活かし、無理なく理想の体型を目指しましょう。

GLP-1ダイエットを初心者向けにわかりやすく解説!GLP-1の種類一覧とオンライン処方に対応しているクリニックをチェックできます。